【イベントレポート】令和5年度「だんだん複業団」成果報告会

2024年3月13日に『令和5年度「だんだん複業団」成果報告会 -松山市内企業×複業人材による企業課題の解決&コミュニティの創出-』を開催いたしました。本記事は報告会当日に登壇いただいた市内企業と団員によるパネルディスカッションをまとめたレポートになります。

▼成果報告会の詳細はこちらになります。
https://dandanfukugyodan-matsuyama.jp/event-20240313/

松山への愛着と外の視点で企業や地域の魅力を発信する

はじめに、人材不足の課題を抱えていた創業1895年の老舗企業・水口酒造(株)と地元・松山と関わるきっかけとなった団員・髙石さんにお話していただきました。

市内企業:水口酒造(株) 6代目蔵元・水口皓介 氏

愛媛県松山市生まれ。都内の大学卒業後、新幹線やリニア中央新幹線のSEとして従事。2019年11月に6代目蔵元となるべく帰松。家訓は「暖簾を守るな、暖簾を破れ」。2022年には「お酒は人と人を繋ぐもの」をコンセプトに、「道後一会」というカフェバー&ショールーミングストアをオープン。商品や空間を通じて「人と人」、「人ともの」を繋ぐことを目標に活動している。

団員:髙石美由紀 氏

愛媛県松山市出身。高校卒業までを松山で暮らし、進学や仕事であちこち移り住みながら、現在は奈良県奈良市在住。 様々な業種・職種を経験し、今はキャリアコンサルタントとして企業や学校領域でのキャリア支援を実施。だんだん複業団には2023年度から参加。フィールドワーク等を通して、今まで知らなかった魅力をたくさん発見でき、ますます松山が大好きに。その魅力をさらに多くの人に伝えるべく、未経験分野での複業に挑戦中。

水口さん)
髙石さんに依頼することになった記事制作の業務は、当初、だんだん複業団に参加した時点では想定していなかった業務でしたが、プログラム内のフィールドワークで髙石さんとお話させていただいて、マッチング面談時にご提案いただきました。

マッチングした要因はスキル・経験というよりは、とても穏やかな雰囲気でお話がしやすい印象で、私と同じ松山出身という人柄が大きかったです。記事制作はお酒や会社のことだけでなく、松山の魅力を発信する内容も書いていただいており、私も知らなかったことがあり、とても勉強になっています。

ご一緒する中で、松山への愛着を強く持たれている方だなと感じましたし、一方で松山から出たからこその外の視点も持っている点は髙石さんの良さだと感じています。

髙石さん)
社会人になった現在も年に数回は帰るくらい、私にとって松山は安心する場所です。ゆくゆくは松山のために何かできたらいいなと思っている時にだんだん複業団に出会いました。

はじめは自身のスキル・経験で何ができるんだろうと不安があったのですが、プログラムに参加してみてフィールドワークでいろんな松山の企業とお話してみると、その熱量の高さにたくさん刺激を受けました。その中でも水口酒造さんは松山や道後エリアを盛り上げていきたいという地域への強い想いを感じました。私もお酒が好きだったこともあり、何かお手伝いできたらと提案してみました。

現在行っている記事制作は自由に書かせていただき、確認のやり取りもスムーズにしてくださり、充実した取組ができています。記事を通じて水口酒造さんのことや松山のことを知ってくれるきっかけになってくれたらとても嬉しく思います。

最後に、水口酒造さんからは「だんだん複業団への参加をきっかけに、今後も複業人材の活用に力を入れていきたい」とおっしゃっていただき、髙石さんからは「自身が知らなかった松山の魅力や強い想いを持った市内企業のことを知ることができ、さらに松山のことが好きになりました」とおっしゃっていただきました。

今年7月には道後のシンボルでもある道後温泉本館の全館営業再開が控えています。髙石さんが書いた記事を通じて、たくさんの人が松山や道後に訪れるきっかけになればと思います。

複業ではあるがその会社の一員として同じ方向を向いて仕事をする

続いて、自社の認知拡大やPRに課題を抱えていた、エステティックサロン等を約36年間運営する(株)ヴァンサンカンと大手総合商社に勤務する団員・向中野さんにお話していただきました。

市内企業:(株)ヴァンサンカン 代表取締役社長・石原美良子 氏

市内企業:ヴァンサンカンアカデミー校長・川口悦子 氏

団員:向中野恵 氏

東京都墨田区出身。現在は総合商社の金属部門で秘書及び事業会社管理業務等を担当。数年前より会社でも副業が認められるようになり、自分でも何か挑戦したいと思っていたところ、人事部からのメールで「だんだん複業団」の存在を知り、説明会に参加。プライベートで美容に興味があったこともあり、本業での経験も活かしながら、マッチングしたエステサロンの営業支援を行っている。

川口さん)
弊社はこれまで外部の方にコンサルティングなどをお願いしてきたのですが、一般的なエステサロンとは異なる弊社の方向性や中身を理解していただくのはなかなか難しいなと感じていました。そんな中でだんだん複業団に参加して向中野さんと出会い、弊社が苦手な部分を客観的な視点で的確に分析や提案をしてくださり、これまでにないスピード感で成果が創出されています。

石原代表)
特に印象に残っていることで、マッチング面談前のフィールドワーク時に弊社のサロンやショップを見ていただいた上で、具体的な質問をしてくださりました。その積極的な姿勢を見て、弊社に心から興味を持ってくださっていると伝わってきました。提案シートも具体的な内容で書いてくださり、単なるアドバイスではなく実行まで一緒に伴走してくださると思い、向中野さんと仕事がしたいと思いました。

向中野さん)
所属する会社は数年前に副業が解禁となり、だんだん複業団は人事部からの案内で知りました。説明会時にヴァンサンカンさんの紹介を聞いて、エステサロンであれば私もプライベートで通っているので、何かお役に立てるかもしれないと思い、プログラムへの参加を決めました。

現地を視察して直接お話できるフィールドワークは、限られた時間でしたが、ヴァンサンカンさんのことを少しでも理解できればと思っていました。提案シートは運営事務局の方を含めて第3者に見てもらって、何度もブラッシュアップをしながら作成しました。

マッチング後はヴァンサンカンさんがやりたいことを一番大事にしながら、私もヴァンサンカンの一員のつもりで、同じ方向を向いて複業することを心がけています。また、関わるからにはきちんと利益を上げたいと思っていて、利益が上がれば結果的に社員の方にも還元され、より良いサロン運営につながると思っています。

最後に、ヴァンサンカンさんからは「向中野さんとご一緒してみて、通常では絶対に出会えない方だと思いました。複業ではありますが、会社のことを私たちと同じ目線で考えてくださっています。なにより向中野さんがとても楽しそうに働いてくださっている姿が嬉しく思っています」とおっしゃっていただき、向中野さんからは「現地で実際に会って企業の方と話してみることで、自分の可能性が広がると思いますし、今こうして複業を実践してみて、本業や日々の生活も楽しくなっている感覚があります」とおっしゃっていただきました。

複業を通して本業や生活にも良い影響がある、自分自身の新たな一面を見つかる人が一人でも増えたらいいなと思います。

単なる企業と人材という関係を超えたつながりによって成長がある

続いて、令和3年度のだんだん複業団に参加し、愛媛県内の企業支援を行う(株)まどんなクリエイトと同年度につながりを持ち、現在も複業パートナーとして関わる大井さん・島田さんにお話していただきました。

市内企業:(株)まどんなクリエイト 代表取締役・武市栞奈氏

愛媛県松山市出身。“社長さんが「こまった」ときも「実現したい」ときもいつもそばに”をコンセプトに、中小企業向けの経営・財務・IT支援事業を運営している。また、コミュニティデザインやプロデュースも多く手がけ、全国各地のコミュニティの運営に広く携わる。月の半分を愛媛、半分を県外で過ごしながら多拠点生活中で、自由なライフスタイルの実現のサポートや全国地方創生も行う。「ウルトラかんちゃんの人生戦略室」主宰。メディア出演、講演実績多数。

団員:大井秀人 氏

松山市出身。化学、IT、電機業界で製品開発・R&Dのデジタル化や新規事業に関わり、現在、化粧品メーカーでIT/DXプロジェクト推進に従事。その傍ら中小企業診断士として、中小事業者の事業計画策定・補助金申請・壁打ち相手などの伴走支援、記事執筆なども行う。だんだん複業団には、Facebook広告を見て「ふるさと愛媛の仕事をしたい!」と令和3年度から参加。中小企業診断協会誌に「だんだん複業団」を紹介したことも。
https://www.j-smeca.jp/attach/article/article_2023_02_03-07.pdf

団員:島田啓佑 氏

営業、バックオフィス、経営支援、採用ブランディング支援などベンチャーで幅広い経験を積み、現在はスタートアップで広報を担う。2018年から地域での複業に携わり、採用ブランディングやEC運営についてのアドバイスに加え、経営者や事業責任者との壁打ち、クライアントへの提案内容の検討、実務面での伴走支援などにも取り組んでいる。

武市代表)
令和3年度にだんだん複業団に参加した時は、独立して3ヶ月程度の個人事業主で、そこで大井さんや島田さんなど団員の方々とご縁ができました。その後、約2年にわたって一緒にクライアント企業の支援や自社の今後についての相談など、幅広く関わりを持ってきました。昨年8月に法人化をしたのですが、ホームページにはパートナーとして団員の皆さんのプロフィールを掲載しております。

現在も関係が続いている方の多くは、お金のためだけに複業しているわけではない共通点があります。そのため、ご一緒する中でその方が何を実現したいのか、何を得られたら嬉しいのかなどを具体的に聞き、弊社としても人材の方のお役に立てることや金銭的報酬以外のことで還元できることを仕組み化してきました。

大井さん)
数年前に中小企業診断士の資格を取得したことをきっかけに何かしようと思っていた時に、だんだん複業団を見つけ、出身地である松山に関わることができたらと令和3年度のプログラムに参加しました。そこで、まどんなクリエイトさんとご縁ができ、これまで数社の事業計画の策定や補助金の申請業務などを行いました。

武市さんに紹介していただく企業は地域に根付き、独自の魅力や技術を持った企業が多く、そういった企業の思いを聞いた上で、ご一緒できることがなにより嬉しく思います。また、ご一緒する中で新たな気づきやインスピレーションが生まれ、本業にも良い循環が生まれています。

まどんなクリエイトさんとの複業はとても刺激的で、武市さんは自分をワクワクさせてくれる存在で、同じ松山出身者として今後も地域企業の支援に貢献できたらと思っています。

島田さん)
だんだん複業団は初年度となる令和2年度から毎年参加させていただき、これまでにいろんな企業とのご縁ができました。その中で令和3年度に出会ったまどんなクリエイトさんですが、事業内ではマッチングという形ではなく、連絡先交換からスタートしました。その後、武市さんとリアルでお会いして、お互いのことを知りながら関係性を深めていき、現在に至っています。

武市さんは新卒で入った銀行を退職して独立し、一つの拠点に留まらずに全国各地を巡りながらリモートで仕事をする生き方や働き方がとても魅力的で、複業という関わりを超えた存在だと感じています。

私も現在、週3日会社員をしながら地域の企業で複業する働き方をしているのですが、武市さんとの出会いがなければ実現できなかったのではないかと感じています。

最後に、まどんなクリエイトさんからは「今年度はだんだん複業団で新たに実施したAnytimeマッチングプログラムに参加させていただき、新たな団員の方々とのご縁ができました。今後もつながりを持った団員パートナーの皆さんと、地域企業の課題解決などのお役に立てるよう邁進していきたいと思います」とおっしゃっていただきました。

単なる企業と人材という関係や金銭的報酬だけが発生する関係を超えていくことで、パートナーとして継続した活動ができるのではないかと思います。

多様なスキルや経験を持った団員が集まることでこれまでにない取組ができる

続いて、令和4年度にスタートした団員同士の横のつながりを創出することを目指した「だんだんコミュニティ」と、本年度新たに取り組んだ市内企業と団員がチームを結成し、3ヶ月間で成果物を創出することを目指した「共創プロジェクトプログラム」。
こちらの両プログラムに参加をしていただいた、団員・髙石さんと福島さんにお話をしていただきました。

団員:髙石美由紀 氏

※プロフィール省略(上記に掲載)

団員:福島香織 氏

大手コンビニの商品開発を10年勤めた後、退社し商品開発のコンサルタントとして独立。主にメーカーの商品開発のサポート、組織づくりの支援を行っている。 家族のルーツがある南予地方に少しでも貢献するため宇和島真珠のブランドUNIQTOUSを立ち上げ活動中。。

髙石さん)
だんだんコミュニティではオンラインでの交流サロンや松山現地でのまち歩き、団員の皆さんと一緒に松山の魅力をまとめたZINEづくりなどを通じて、いろんな団員の方々と出会うことができ、学びの多い時間を過ごすことができました。普段ではなかなか出会えないスキルや経験を持った方々と「松山」という共通点で集まり、いろんなお話ができたのは貴重な機会でした。

皆さんと一緒に松山をまち歩きした時は、お互いに気づいたことをシェアし合ったり、ZINEづくりをした時はそんなところに目を付けるんだと、一人ひとりの視点の違いに驚きました。だんだんコミュニティを通じて、地元・松山をさらに知る機会にもなりましたし、なにより団員の皆さんが松山に興味を持って、松山を盛り上げようとする姿がとても嬉しかったです。

共創プロジェクトプログラムは、市内企業と6名の団員によるチームでブランディングや商品企画を行うという私にとっては新たなチャレンジとなる機会でした。私一人では到底できないことを6名それぞれのスキルや経験をシェアしながら、成果物として形にしていくプロセスはとても新鮮で、貴重な経験になりました。

福島さん)
大手コンビニで商品開発の経験をし、現在は自身で会社を立ち上げて活動しているのですが、もともと家族のルーツが愛媛県西予市にあり、そこでも会社をつくって活動しており、愛媛は縁のある地域でした。

だんだん複業団は令和3年度に参加したのですが、当時はコロナ禍だったことやコミュニティ活動がなかったので、今年度だんだんコミュニティに参加してみて、リアルで団員の皆さんと会って話すことで新たな発見ができたり、自身の経験をコラムにまとめてみたり、松山を歩いた上でZINEに落とし込んでみたり、インプットだけでなくアウトプットする経験は私にとっては貴重な機会でした。普段使わない脳みそを使って、知的好奇心を満たす感覚がとても刺激的でした。

共創プロジェクトプログラムは、普段は全然違う仕事をしている方々とお金が絡まず、フラットな関係で企業の課題にアプローチする特別な経験ができました。プロジェクトでご一緒した市内企業と今後も関係性が継続することになったので、今回のご縁を大事にしていけたらと思っています。

最後に、福島さんからは「だんだん複業団に参加する年代は40代〜50代がメインになっているので、20代〜30代の人たちがもっと参加することで、盛り上がりが加速すると思います。また、私が西予市で会社を持っている理由でもあるのですが、地域貢献する方法に納税があります。愛媛のものを愛媛に限らず首都圏や海外で販売し、それで得られた収益の一部を税金として地域に還元するように、経済の循環みたいなものをだんだん複業団でつくることができたら面白いと思います。複業をして企業から報酬をもらって満足、松山と関係人口化して終わりではなく、コミュニティとして地域に対してアプローチする活動が増えれば、だんだん複業団はよりサステナブルな事業になっていくんじゃないかと思います」と、だんだん複業団の持つ可能性について言及していただきました。

まとめ「だんだん複業団がつくる価値と未来」

報告会の最後は、だんだん複業団の地域コーディネーターを務める稲見さんから「だんだん複業団がつくる価値と未来」についてお話をいただきました。
その中で、日本全体の社会課題である人口減少・少子高齢化について触れ、四国で最も人口の多い松山も同様の状況にあり、数十年先には現在から約30%ほど人口が減少する試算を共有した上でテーマについてお話していただきました。

プレゼンター:だんだん複業団 地域コーディネーター・稲見益輔

1983年生まれ。新居浜市出身。2015年に愛媛を盛り上げる活動をしたいとの想いから大阪から松山に移住。 税理士事務所「中央会計」で会計・税務を中心としたコンサルティング業務をしつつ、コワーキングスペース「マツヤマンスペース」、地域コミュニティ「たてヨコ愛媛」など、地域でのプロジェクトを運営している。だんだん複業団では地域コーディネーターとして、都市部の複業希望者と松山市内企業をつなぐ活動を行う。

稲見さん)
人口が減ると市場全体も縮小し、商売を行う人たちの売上は下がるかもしれない。また、人手不足によってこれまでと同様に事業運営が持続できない、新しい事業を立ち上げることもできないかもしれない。

そんな状況でデジタル化を推進したり、AIなどを取り入れて自動化を実施したり、人手不足でも事業運営できる仕組みをつくることがより求められてきます。そして、そういった取組はいろんな専門性を持った人たちが集まる、独自性のある面白い企業がたくさんあるといった多様性がある地域こそが実行できると思っています。

松山ではだんだん複業団が人口減少に影響されず、地域外から多様なスキルや経験を持った人たちが関わって、企業の課題解決に貢献することができる取組であると言えます。この取組に共感した方々と一緒にこの事業を大きくしていきたいと思っています。

本年度のだんだん複業団は新たなプログラムにもチャレンジしたことで、これまでになかった成果も生まれ、新たな可能性を見出すことができた1年でした。稲見さんの言葉にある通り、多様な人材が地域にいることによって、地域や企業が抱える課題の解決がより進んでいくのではないでしょうか。だんだん複業団に興味を持ってくださった方や取組に共感してくださった方と一緒に松山を盛り上げていけたらと思っています。

以上、令和5年度「だんだん複業団」成果報告会のレポートでした。最後までお読みいただきありがとうございました。だんだん。

コンテンツ一覧

関連記事

2023年度を総ざらい!第5回交流サロン実施レポート

コラム

コンビニでヒット商品を開発してきた担当者が考える「いい商品開発と悪い商品開発」

コラム

松山を歩いて「ZINE」をつくろう!2日間のまち歩きレポート

コラム