「愛媛県松山市で複業をはじめてみませんか」令和4年度「だんだん複業団」プロジェクト説明会【イベントレポート】

こんにちは。だんだん複業団事務局の萬里小路(までのこうじ)です。 令和4年度「だんだん複業団」プロジェクトの複業人材向け説明会を8月23日に開催しました。本コラムは、プロジェクトの主催者である松山市による事業の取り組み背景や、2名の複業実践者とのパネルディスカッションの内容をまとめたレポートになります。地域で何か活動してみたい、一般的な副業と地域での複業は何が違うのか気になるという会社員やフリーランスの方々に読んでいただけたら幸いです。

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松山市からの挨拶

はじめに松山市地域経済課の伊賀上さんより、だんだん複業団の取り組み背景を説明いただきました。

「だんだん複業団は、令和2年度から実施している事業で、昨年度は86名の方々にエントリーしていただきました。コロナ禍において、テレワークや副業、ワーケーションといった働き方の多様化が加速する中、居住地がどこであっても仕事ができる環境が生まれています。

また、都市部への人材や機能集中のリスクが顕在化したことで地方に拠点を移す企業が出てきたり、働き手の方々に関してもUIターンや転職を検討したりと地方回帰の機運が高まりつつあります。このような中で松山市は、複業によって自らのスキルを活用したいと考えている都市部の人材と、松山市内企業とのマッチングを支援することで、企業の課題解決関係人口の創出につなげていきたいと考えています。

だんだん複業団の「だんだん」には「徐々に」といった意味のほかに、松山市の方言で「ありがとう」という意味があります。松山市内企業と人材の方々がだんだんとお互いに分かり合い、ありがとうと思い合えるプロジェクトに育てたいという意味を込めています。

松山市には専門的なスキルを持った人材が不足しています。また、都市部の企業では当たり前のようにやっている業務が地方では特別なスキルになることもあります。松山にゆかりのある方、地方との関わりに興味がある方、将来的に二拠点居住や移住をお考えの方などとお会いできることを楽しみにしています。」

複業実践者とのパネルディスカッション

続いて、昨年度だんだん複業団に参加した田村さんと現在2つの地域で複業を実践する松浦さん、だんだん複業団地域コーディネーターの稲見さんをゲストに、複業を始めたきっかけや地域で複業をするにあたってのポイント、松山市内企業が求めていることなどをパネルディスカッション形式でお話しました。(モデレーターはだんだん複業団事務局の亀井)

亀井
皆さん、こんばんは。パネルディスカッションのモデレーターを務めますので、どうぞよろしくお願いいたします。地域での複業は初めての方も、経験している方も、だんだん複業団や地域での複業をより身近に感じていただけるような時間にできればと思っております。まずは簡単に皆さんの自己紹介をお願いできればと思います。

田村さん
こんばんは。田村和久と申します。本日は、昨年度だんだん複業団に参加してマッチングまでした経験をこの場で色々とお話できればと思っております。だんだん複業団には小学5年生から中学3年生まで松山市に住んでいたといった接点から参加させていただきました。本日はよろしくお願いいたします。

松浦さん
こんばんは。松浦和美と申します。私は静岡県出身で現在、ご縁があって静岡と茨城の2地域で複業に関わっています。複業は本当にご縁でたまたましているという感覚が強いのですが、本日は色々とお話できればと思っていますので、よろしくお願いいたします。

稲見さん
こんばんは。松山市でだんだん複業団を企業に紹介している稲見と申します。私自身は、松山ではマツヤマンスペースというワーキングスペースの運営をしていたり、税理士事務所を運営しています。2015年に松山市に移住をしてきたのですが、その時にこのような取り組みがあれば移住前にいろんな人と知り合うこともできたのかなと思うので、これから皆さんと一緒につくっていければと思っています。

亀井
それでははじめに、「地域での複業をはじめるに至ったきっかけ」について実践者のお二人に聞いていきます。

田村さん
昨年度のだんだん複業団に参加したのが、地域で複業する最初のきっかけでした。プログラムへの参加を通じて、自分を見つめ直す期間をいただいた印象が強く残っています。松山には先ほどお伝えした通り、5年間住んでいたこともあって、何かしたいなという思いがありました。また、リアルな話として本業がコロナ禍で逆風にあった業界でしたので、転職という選択肢もありました。ただ、今の自分には転職は違うなと思って、複業というカタチで地域に貢献でき、自分も成長できるみたいなところを目指したいなと思ってエントリーしました。

松浦さん
私はコロナ禍で実家に帰りづらくなってしまったこともあり、今後何かあった時に地元に気軽に帰れなくなってしまうかもというのがきっかけでした。そんな時に、リモートで副業など地域に関われる機会があればいいなと、たまたまイベント検索で「静岡」というキーワードで探していたら、だんだん複業団と同じような地域での複業マッチングのプロジェクトがあって、流れに身を任せてエントリーしました。

亀井
ありがとうございます。現在、どのような地域で複業をしているか教えてください。

松浦さん
現在、茨城と静岡の企業さんに関わっています。茨城では、だんだん複業団に似ている取り組みなのですが、副業などで地域に関わるプロジェクトの企画やファシリテーションをしています。静岡では、靴と健康に関する取り組みをしている社団法人で広報支援などをしています。

亀井
2つの地域で複業するってなかなか大変じゃないかなって思ったのですが、どのくらいの頻度やペースで関わっているのですか。

松浦さん
基本的には事業者さんの状況やペースに合わせて関わっているのですが、茨城の方は、週に1回の打ち合わせを1時間程度やっていて、そこで宿題やTODOがあれば次の週までに整理する感じです。静岡の方は、2週間に1回の打ち合わせで、その間はチャットでやり取りをしています。2つの地域で大体、月に1~2営業日分ぐらいの時間を使って仕事をしています。

田村さん:
私は地域複業一年生ですが、だんだん複業団への参加をきっかけにありがたいことに1年間に4社で複業に関わる機会をいただきました。地域は松山、静岡、名古屋、北海道と、事業者さんも個人事業主の方から企業、NPO法人と様々です。業務としては、本業とは異なるSNSマーケティングやプレスリリース、新商品開発などに携わっています。その中で松山の方は、普段はチャットでのやりとりを中心に、月に1回定例ミーティングをして代表の話を聞いたり、壁打ちをしたりしています。私の場合は月10時間〜20時間ぐらいの時間を使って仕事をしています。

亀井
ありがとうございます。現地側で市内企業をコーディネートしている稲見さんから見て、松山市の企業はどのような動機でだんだん複業団に参加している印象でしょうか。

稲見さん
先ほど、松山市の伊賀上さんからあったと思うのですが、都市部では当たり前のようにやっている業務、例えばマーケティングや事業開発をしている人材は、松山市内では数が少ない状況です。また、これから新しいことをやっていきたい、こんなことを新しくやろうとしているんだけどそこにアイデアが欲しい、松山の文化や地域に馴れ親しんだ人ではない視点でアイデアが欲しいなど、いろんなスキル・経験を持った方々を求めていると思います。

亀井
ありがとうございます。私も地域の経営者さんとよくお話するのですが、普段会えないような人たちと取り組んでいきたいという前向きな姿勢を持った企業が複業人材を求めている気がします。続いて、実践者のお二人に、本業と近い仕事で複業をしているのか、逆に本業とは違う仕事をしている場合、そのコツなどをお伺いしたいです。

田村さん
私は本業とは違う仕事を複業ではしています。とはいっても特別なスキルが必要な仕事なのではなく、伊賀上さんや稲見さんがおっしゃったように、自分のこれまで当たり前にやってきたことをやっている感じです。例えば、打ち合わせの議事録を取ったり、次の打ち合わせまでにやることを決めたり、ゴールを設定したり、そのゴールまでのマイルストーンを決めていったりといったことです。分野や領域が違っても、場を進行したり、考えを整理したりとお役に立てることはあるんだなと感じています。

亀井
ありがとうございます。業種や業界は違っていても、ファシリテーションやコミュニケーションなど汎用的なスキルがマッチしているんですね。それは確かに普段当たり前のようにやっていると必要な力だとは思えないのかもしれないですね。

松浦さん
私も田村さんのお話聞きながらわかる!と思いながら聞いていました。私は元々接客業からキャリアをスタートして、その後転職をして現在は企画書を作成したり、研修の運営などをしているのですが、正直言ってこれといった専門的なスキルはないと思っていました。実際に複業プログラムに参加すると、自分より専門性も高い経験豊富な方がたくさん参加していて、私に何ができるんだろうと感じたりもしました。ただ、実際に企業さんと関わってみると、打ち合わせの内容を資料に整理したり、段取りやスケジュールを決めたりといったことで、「本当に毎度助かる」とおっしゃっていただけるんです。また、静岡の広報支援の仕事も、仕事で広報の仕事をしているわけではなく普段、プライベートでSNSをやっている程度ですが、その感覚でやってほしかったと言ってもらえるんです。

亀井
初めて複業をされる方は特にそうかもしれないですが、何か専門性あるスキルを持ったプロフェッショナルじゃないと複業はできないのではないかと思われるのですが、お二人のお話を聞いていると自分では思ってもみなかったことが役に立ったり、意外なことが求められているのが地域での複業のリアルなのかもしれないですね。続いて、地域の企業さんがどのような人を求めているのか、稲見さんに聞いてみたいと思います。

稲見さん
だんだん複業団に参加する企業は、何か新しいことにチャレンジしようと思っている企業が多いのですが、面白いアイデアをどんどん出せる方やまずはトライしてみようという前向きな方が求められているのではないかと思います。また、一般的な副業は業務を細かく切り出してスキルでマッチングしていくケースが多いと思うのですが、だんだん複業団はどちらか言うとパートナーとして寄り添ってやっていくケースが多いと思います。だんだん複業団は、現地に行くフィールドワークというプログラムがあるのですが、こちらに参加する方々は皆さん自費で現地に来ているんです。前向きな姿勢で主体性がないとそもそも現地まで来ないと思うのと、スキルだけでない「思い」が溢れる部分でマッチングが生まれているんだと思います。

亀井
ありがとうございます。ちょうど参加者の方から質問が来ているのでこちらを聞いてみたいと思います。「本業と関係ないところで仕事をするにあたって、自己学習されたりしたことはありますか?」という質問なのですが、こちらはいかがでしょう。

田村さん
私は本業と違う仕事に関わっているので日々勉強しています。SNSマーケティングやりたいです!となった時に、自身がTwitterをやっていなかったので、まずは自分でやってみようとスタートしてみたり、飼料肥料の会社さんで仕事するにあたって、肥料のこと全然知らなかったので図書館で本を読み漁ったりしました。これらのインプットは最終的に、何かアウトプットすることが前提にあるので、楽しく勉強することができました。

亀井
インプットして終わりではなくアウトプットが先にあって、だからインプットするという考え方、大事ですね。もう一つ質問が来ていて、こちらは松浦さんにお聞きできればと思うのですが、「複業を始められる際に不安だったとか、大変だったことはございますか」?という質問です。

松浦さん
ありがとうございます。いくつかあって、一つ目は本業とは別に業務に割く時間がつくれるかどうか。二つ目はやったことがないことをやるので最後までやり切れるかどうか。三つ目はリモードがベースなのでコミュニケーションの取り方は大丈夫だろうかということはあったと思います。それぞれの不安に対する対応策としては、一つ目は企業さんに稼働する時間は週末になることを予め伝えました。二つ目は自分ならこのやり方であればできます、ここまでならできますというように、自分のできることをきちんと伝えるようにしました。三つ目はチャットなどを使って、こまめに丁寧にコミュニケーションすることを意識しながらやるようにしていて、現在、これらの不安は解消して複業することができています。

亀井
ありがとうございます。二つ目のここまではできる、ここからはできないという境界線をきちんと持つことは大事ですよね。そこで何でもやります!できます!と言いたくなってしまうと思うのですが、アクセルだけでなくブレーキも持って対応することが本当の意味で企業のためになるのだと思います。お二人とも非常に複業を楽しんでいらっしゃる印象があるのですが、地域で複業をやってみて発見やちょっとした変化などがあればお伺いしたいです。

田村さん
私は正直、変化しかなかったです。石橋を叩いて、叩いても渡らないという人間なのですが、地域の企業さんと関わっているととりあえずやってみようという気持ちになっているんです。これは複業を始める前の不安でもあったのですが、結局、不安に思ってもやらないことにも何も始まらないし、そこにチャレンジしてみようと地域の企業さんが言ってくれる。また先ほど、都市部の当たり前が地域にとって特別というのと逆説的かもしれないですが、地域に関われば関わるほど、今の本業の環境はありがたいことなんだと思えたりして、これまで以上に穏やかな気持ちにもなったと感じています。

亀井
本業にプラスで仕事をしていたら、逆に疲れちゃうんじゃないのって思ってしまうところもありますが、逆に穏やかになるという好循環に生まれているんですね。

松浦さん
一つは田村さんがおっしゃったことと重なるのですが、自分のできることをまずはやってみることが大事だなって思いました。私が複業を始めるきっかけになったのも、「複業やるぞ」って思ったよりかは「流れに乗ってみて結果的にやることになった」のが正直なところだったので、結果マッチングしないかもしれないけど、まずはやってみるってことが大事という気持ちになったのは大きいです。もう一つは、会社以外の場所で大事に思える仲間やそういった人たちとの出会いがあることが大きく、仕事とプライベートの中間ぐらいの感覚で、自然と気持ちが穏やかでいられるんです。また、茨城は自分にとっては初めて関わる地域でしたが、その地域の食や文化に触れることで、普段の生活に何気なくその地域のものが入ってくるようになって、生活も豊かになった気がしています。

亀井
お二人とも「穏やかになった」というのが共通しているんですね。本業一本だけ見えないことや出会えないことがあって、視点が広がることによって、逆に今いる会社が良く見えたり、良い面が見つかったりと、地域での複業によるプラスの変化がお二人から感じることができました。それでは最後に皆さんから一言ずつお願いします。

稲見さん
地域の企業はオンラインやチャットでの対応などが難しいのかなと思うところもあるのですが、松山市内企業の多くはそのようなコミュニケーションや関わり方に慣れている企業が多いので、違和感なく関係性をつくることができると思います。過去2年間で市内企業18社で40件のマッチングが生まれていますし、都市部にはない地域性を持った企業がたくさん参加していますので、ぜひ皆さんのスキル・経験を提供していただけると、より活性化していくのではないかと思います。

田村さん
本日はありがとうございました。昨年、私はこの説明会を聞いている立場で、このタイミングはエントリーしようかな、どうしようかなと迷っていましたが、結果、エントリーしてみて自身はプラスの変化があったことを実感しています。今だから言えますが、悩むのは最後、マッチングする手前くらいでも正直良いと思います。まずは一歩踏み出して、プログラムを楽しんでみてください。

松浦さん
私もまずはやってみるっていうのがすごく大事だと思います。実際にマッチングするかどうかって最終分からないところがありますし、マッチングがゴールではなくそこから新たに企業さんとスタートするので、その時になってからで十分だと思っています。

亀井
本日は貴重なお話をありがとうございました。

だんだん複業団へのエントリーを希望する方へ

最後に、だんだん複業団にエントリーしたいという方はこちらのページからエントリーをお待ちしております。2022年9月末現在、複業マッチングプログラムへのエントリーは締め切っていますが、参加者同士の交流や複業以外の関わり方を持つことができるコミュニティプログラムへのエントリーは継続していますので、ご興味のある方はまずはエントリーしてみてください。コミュニティプログラムの詳細は、だんだん複業団コミュニティマネジャーの竹田さんのこちらのコラムをチェックしてみてください。

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