こんにちは。2021年からだんだん複業団に参加している福島香織です。
大手コンビニで商品開発に従事し、退社後明治大学のビジネススクールで学びながら2019年に会社を設立しメーカーの商品開発のサポートや講演活動をスタートしました。2021年にはビジネススクールで学んだことを実践したいと思い、地域貢献をすることを目的に愛媛県西予市に会社を作り宇和島産真珠のジュエリーブランドをローンチしました。
なんとこの春からは群馬県の短期大学で講師として働くことになり、もはや自分が何者かがわからなくなってきたというのが今の状態です。
今年度から始まった共創プロジェクトに参加させていただき、新口農園さんの「こだわりのパプリカの愛称を作る」という機会に恵まれました。商品への名づけは商品開発において大きな意味を持つ重要な行為です。今回それぞれ違う仕事をしているメンバーと意見交換しながら進めていきましたが、改めて「商品開発のプロセス」を体験するというのは難しいながらも楽しいことなのだと思いました。
私は普段コンサルタントとしてクライアントさんの商品開発に関わっていますが、非常に恵まれた仕事に携わっているということを改めて実感しています。このコラムでは様々な商品の生まれる場にいた私から見た「いい商品開発」「悪い商品開発」について少し綴っていきたいと思います。
お客様が商品を手にしたときの表情がイメージできるか
まず初めに「いい商品開発」です。商品が発売された時にどんなお客様に喜んでもらえるのかはっきりイメージできる時、私はいい商品開発だと思います。食べ物であれば、食べているであろう人の顔が浮かぶことです。どんな顔でどんなふうにその商品を食べているのか、食べた後どんな感想を持つのか、どんな気分になるのか。商品を企画する時はこのようにお客様の食べている姿を思い浮かべるのです。
どんな商品で、誰を、どんなふうに喜ばせるのか、そのことを商品コンセプトと呼びます。商品開発の入り口です。コンビニのスイーツであれば、「35歳の単身の女性が慣れない課長職に疲れて帰宅する時、頑張った自分にご褒美として買う小さいけれど本格的なショートケーキ」というふうに考えていきます。
この「誰が」の部分がターゲット、「どんなふうに喜ばせるのか」が商品の価値になります。商品コンセプトを作成するとおのずと商品の味やサイズ感、価格、商品名など詳細を決めることができます。男性は女性より酸味のあるものを苦手にする方が多いです。コンビニの商品であれば男性の方が細かい価格設定に拘らない傾向があります。例えばある商品の価格設定を198円と200円に設定して別々の店舗でテストマーケティングをしてもほとんど販売数に差がでないという感じです。女性は濃厚という言葉に弱かったり、食感を想起できる言葉に反応して購入する傾向があります。(私の経験に基づく傾向なので全ての人にこれがあてはまる訳ではありません。)
販売された商品を、客観的に評価することが大事
重要なのはこのコンセプトに基づいて開発された商品がコンセプト通りにお客様に買ってもらえるのか、それを客観的に判断することです。先ほどの例で考えれば、35歳の単身女性に手に取ってもらえる機会を作れるのか?そもそも自分たちのお客さんにそういう人はいるのか?課長職で疲れてスイーツを買いたくなるのか?ご褒美は小さいショートケーキでいいのか?など考えていくとコンセプト通りの光景が目に浮かぶほどの完成度の商品というのはそう簡単には作れないのです。
また、一度開発をしても見直しをしていくことが必要です。商品コンセプトと実際の買われ方にギャップがあり、思うような売上ではなかった場合は調査をして見直します。商品を大量生産する段階で商品コンセプトが実現できなかった場合も見直ししていきます。お客様の嗜好はどんどん変化していくので、時代の流れを汲んで変更をしていくこともあります。
いい商品開発をする人は商品を通じて人を喜ばせたいと思う、人が好きな方が多いと思います。観察眼に優れ、何に人が喜んでいるのかを感じ取ることが得意です。お土産を選ぶのが得意とか、おもてなしが好きという方は、もしかしたら商品開発に向いているかもしれません。
悪い商品開発は、消費者に即座に理解されないもの
一方で悪い商品開発です。それは食品で言えばその商品がどのような味がするものなのかわからないものです。そんな商品あるの?と思われるかもしれません。CMでも15秒間テレビ画面に流れて何のCMだったのかわからない時がありますよね?意外にもそんな商品が存在します。特に食品のように売り場に競合メーカーの商品を含め選択肢が多い場合、短時間でそれが何か分からなければ買ってもらえないのです。想像した味よりも美味しくない場合、2度と買ってもらえないどころか、同じ会社の商品すら見てもらえなくなる可能性があります。
初めて購入する商品は外から見える期待値と中身の価値がしっかり釣り合ってないと消費者はがっかりしてしまいます。コンビニではランチの時間に売れる商品は期待通りでないとすぐに売れなくなり、どんどんカテゴリーの売上ごと下がりました。会社員の方は短い昼休みの時間の中で購入し、それを食べて午後の仕事をしなければならないのです。休憩の時間に美味しくない商品を食べなければならないとなると苦々しい時間になります。販売データの推移を見ながら食べ物の恨みは恐ろしいなぁと思っていました。スイーツは賛否両論ある方が話題になることもありますが、非常に稀なケースでなかなか狙ってできることではないと思います。
商品開発というと、ふっと思いつくとか、パッと閃くと思いますがどちらかというと考えに考え、言葉を磨き商品コンセプトを作成して実現していく地味で難解な作業だと思います。その分、実現できて商品が飛ぶように売れていくのはとても嬉しいことです。
また、過去に携わった商品がどんどん進化しているのを見ると、私はとても嬉しくなります。だんだん複業団でも企業と個人の強みがフィットして様々な商品が出来上がり、育っていくのを見るのを楽しみにしています。